中華料理はコントロールする
こんにちは
前回の記事で四川風の基本的な考え方を学びましたので、今回もそれを使った料理を作って行きたいと思います。
私の妻は食べたいものを聴くと必ず肉と答える肉食系。
昨日の麻婆豆腐は肉よりも豆腐やなすをプッシュした料理でしたので、今日は肉プッシュで行きたいと思います!
しかしこの四川風の味付けにマッチするのってどんな肉なんでしょう?
今日はそこらへんのことから考えて行きたいと思います!
スパイスの力
四川風とは要するに異なる辛さを持つスパイスを合わせて使うことで複雑な辛さを生み出すということでした。ではそもそも何故料理を辛くする必要があったのでしょう?
味に対する好みはもちろん個人差があり、それは個々人の生理学的差異や文化的背景、過去の経験などに左右されます。つまり辛い食べ物に囲まれた人間は自然と辛いものが好きになるのです。
四川料理の辛さは慣れていない日本人が食べるとお腹を壊してしまうほどの辛さだと言います。四川の人々は辛い物に囲まれて生きているからこそ、それほどの辛さを楽しめるのでしょう。では何故彼らは料理にたくさんの唐辛子や花山椒を使うようになったのでしょうか?
そもそも四川料理の唐辛子は夏場に湿度と温度が高い四川で食材を安全に保管するために使われていました。食材の保管が目的ならあらゆる食材に唐辛子が使われたのでしょう。
その結果「辛」に対する鋭敏な感性が養われていきました。
安全な食材の確保という生存戦略がやがて文化にまで発展していく。食という「生」に密着したものの文化だからこその起源であり、非常にロマンを感じます。
味をコントロールする
日本のように急流な川が少なく、黄河や長江といった緩やかな流れの大河が多い中国では清潔で飲みやすい水の確保が困難でした。
水は料理に必需品。水が悪ければそれをカバーするために自然と味付けは濃くなるものです。
日本は水に恵まれていて素材の個々の味を生かした料理を四季の変遷とともに味わう食文化が発展しました。その特徴は出汁の取り方に顕著に出ており、日本の出汁はカツオや昆布を5〜10分程度さっと茹でます。なるべく雑味が少なく旨味だけを抽出した出汁を取るのです。
対照的に中華出汁は鶏肉や豚肉を青ネギ、生姜とともにたっぷり3、40分煮込み素材の味をとことん出し切ります。良い水が取れないがグルメな民族として育った中国人ならではのアイディアと言えるのではないでしょうか。
和食の味付けはなるべく素材そのものの味を大切にし、料理人は自分の個性を主張しすぎないよう食材を生かすことに徹します。
対照的に中華の味付けは水の悪さをカバーすべく多くの香辛料を使用し、徹底的に料理人の個性を出します。いわば味をコントロールし料理人の理想の味を作り出す料理なのです。
じゃあ砂肝を焼く!
主張する料理、四川の味付け。そんな味付けは臭みや個性の強い食材を調理するのに向いているんじゃないでしょうか?
ということで今回臭みのある内臓を使った料理にチャレンジ!
四川風の砂肝炒めを作っていこうと思います。
レシピ
四川風砂肝炒め
材料(2人前)
砂肝300g
もやし200g
にんにく2欠片
唐辛子3つまみ
醤油小さじ3
赤ワイン80cc
ごま油 お好みで
花山椒(結局買っちゃいました)お好みで
1、下準備ー砂肝は真ん中で二つに切って、銀皮を剥がしておく。砂肝のグラデーションで白くなっている部分がそれ。包丁で切り落とす方法、指で剥がす方法など色々ありますが、私は包丁で切れ込みを入れて、その後指で剥がしました。
にんにくを薄切りにする。
もやしは洗っておく。
2、下準備した砂肝を赤ワイン40ccと一緒に袋に入れて揉み込む
3、フライパンに油を多めに敷きにんにくと唐辛子を香りが出るまで炒める。
4、香りが出てきたら、にんにく、唐辛子を別の皿に移しておく。
5、そのまま同じフライパンを使い2の砂肝を強火で4分ほど炒める。
6、砂肝全体に焼き色がついてきたら、もやしを投入。中火でもやしがしなってくるまで炒める。
7、もやしがしなってきたら、残りの赤ワイン40ccを入れて2分ほど煮詰める。
8、次に醤油、4のにんにく唐辛子を入れて強火で混ぜながら炒める。
9、全体に醤油の色がついてきたら火を止め、お皿に盛り付ける。
10、お好みの量の花山椒、ごま油をかけて完成。
砂肝の歯ごたえとパンチの効いた麻味と辣味がベストマッチ!砂肝の臭みもほとんど感じることなく美味しく食べることができました。今度はもっと臭みの強いレバーやラム肉でやって見ても良いかもしれませんね。ごちそうさまでした。
今回は四川風という文化がどうしてできたのかを学ぶことができました。
さまざまな食文化がありますが、元をたどってみれば土地ごとの特徴に対応した生存戦略に他ならないのかもしれないですね。色々調べて行きたいところであります。
さて二回続けて辛い料理を作ってきましたので、今度は甘い料理を食べてみたいところ。次回は何かデザートを紹介する記事がかけたらな、と思っております。
参考
2011年 キッコーマン食文化セミナー 「火の料理・水の料理」食に見る日本と中国 | キッコーマン
ロバート・ウォルク著作、ハーパー保子翻訳、株式会社楽工社発行『料理の科学①』